okayanがブックオフに用事があるというのでついて行って、たまたま見つけたコート・ドール斉須政雄さんの「十皿の料理」。読み出したら止まらない面白さで一気読み。
斉須さんの本は昔「調理場という戦場」を読んで激しく感銘を受け、いつか行ってみたいと思いつつ、なかなか勇気がでず未だにお店に行ったことはない。でもこの本を読むとやはり行ってみなければ!と思う。日本のフレンチを代表するシェフと自分は比べ物にならないかもしれないが、その志、料理をするときに大切にしている事、共感できる事だらけで勇気が出た。
私は修行もしたこともなく、料理学校に行ったこともない、ただ20年お店をやりながら、お客様に見捨てられないうちに腕を磨いて、自分だけの料理道を作ってきた。それは家庭料理道であり、普段着のごちそう道であり、リトスタ道で、ミヤザキアサミ道で、どこにでもありそうで、でもやっぱりミヤザキスパイス、フィルターが通してある、普通である。
それでもいいんだな、と思った。
分けとく山の野崎洋光さんの「美味しい方程式」という本を20年前に読んで、いたく納得し共感して、その考え方をベースに自分の料理を積み上げてきた。そのことをご本人に伝える機会に恵まれ、野崎さんがお店に来てくれ、良いお店だ!俺は本当に嬉しい!と言ってくれた、そのとき私は、やってきてよかったな、間違ってなかったなと安心し、勇気をもらった。
そうやって一流の人の仕事を見たり聞いたり、本であっても勉強することで、そのことについて真剣に向き合い続けることで、何か得ることもできるんだと、今は思う。
文章で書かれるレシピには、目に見えるようなコツと息遣いが感じられて、自分もそこで一緒に料理しているような心地よい気持ちになる、それは私が少しは料理人になれたということなのかもしれない。
本の中で得た勇気。
「この十皿の根底は全て同じです。『誠実さ』です。」
「こんな普通の料理にこそおいしさはひそんでいるのだ、おいしさは光っているのだ」
「ごく当たり前のものであっても、素材相応のおいしさが光っていれば、一つの料理としての格を持ちうる」
「本当にいいものはなんでもないように普通の顔をしていて無駄がない。」
「当たり前の顔をしてすごいというのは、能く考えた結果だと思います。料理も、もちろん、人間もです。」
「本当に旨いものは、皆さんのお宅の食膳にのっている。僕等の役目は、それをプロの目で眺め直して、代金に見合う形に仕立て上げていくこと。料理店に来て食べる楽しみを作り上げること。」
「目立たぬごくごく日常の素材からも光るものを見つけ出すのが、料理のセンスであり、経験の深さ、確かさではないだろうか。」
「強いものにへつらうことなら誰にでもできる。弱きものに冠を。」
「ものごとは素直に学ばなければならないが、鵜呑みではしょうがない。」
まだまだ、毎日学びたくて仕方がない、これを幸せと言わずしてなんと言おうか。